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911通報を半減させた「コミュニティ救急救命士」

911通報を半減させた「コミュニティ救急救命士」

― 救急車を呼ぶ前に、地域で支えるという新しい救急のかたち

アメリカ・バージニア州プラスキ郡では、救急医療サービス(EMS)の負担を軽減するため、救急救命士が患者の自宅を訪問し、緊急事態になる前に必要な医療・福祉サービスへつなぐ「コミュニティ救急救命士」の取り組みが進められています。

この取り組みは、救急車を増やすのではなく、「救急車を呼ばなくても済む環境を地域につくる」という、新しい救急医療の考え方です。


6,000件を超えるEMS通報。そのすべてが緊急ではない

報道によると、プラスキ郡では2025年に6,000件を超えるEMSへの通報がありました。

その背景には、生命に直結する緊急事態だけではなく、

  • 慢性疾患の管理
  • 退院後の生活上の不安
  • 医療機関へのアクセス
  • 福祉サービスとの連携不足
  • 誰に相談すればよいかわからない

といった、「早めの対応は必要だが、必ずしも救急搬送を必要としない問題」があります。

プラスキ郡のコミュニティ救急救命士、エリカ・ダルトン氏は、EMSがこうしたさまざまな問題に対する「デフォルトの解決策」になっていると指摘しています。

つまり、本来は別の医療・福祉サービスで対応できる問題まで、最終的に911へ集中してしまっているのです。


救急救命士が患者の自宅へ行く

そこでプラスキ郡が行っているのが、救急救命士による家庭訪問です。

現在、ダルトン氏は約70人のハイリスク患者を担当。

患者が体調を崩して911へ通報するのを待つのではなく、あらかじめ自宅を訪問し、患者の状態や生活環境を確認します。

そして必要に応じて、医療機関や福祉サービスなどの地域資源へつなげます。

キーワードは、

「救急搬送」ではなく「ケアへの橋渡し」

です。


911通報が200件から98件へ

この取り組みでは、実際に大きな成果も報告されています。

プラスキ郡公共安全局によると、プログラム参加患者による911通報は、

参加前3か月:200件

から、

サービス開始後:98件

へ減少しました。

単純比較では、約半分です。

さらにプログラム終了後には、26件まで減少したとされています。

救急車の適正利用を呼びかけるだけではなく、なぜその人が救急車を必要としているのかを地域側から解決していく。

そこに、この取り組みの大きな特徴があります。


日本でも「救急車を呼ぶ前」と「病院へ運んだ後」が重要になる

日本でも救急需要は増加を続けています。

一方で、消防の救急車には限りがあります。

すべての患者に対して、消防救急だけで対応し続けることには限界があります。

だからこそ重要になるのが、

「119番するか、しないか」だけではない選択肢を地域につくること

だと私たちは考えています。

例えば、

  • 在宅療養中の患者さんの状態確認
  • 訪問診療との連携
  • 医療機関への非緊急搬送
  • 退院後の患者さんへの支援
  • 医療資格者による搬送中の継続的な状態管理
  • 夜間の相談窓口
  • 医療・介護・福祉との連携

こうした仕組みを地域の中に整備することで、消防救急でなければ対応できない患者さんへ、限られた救急資源をより集中させることができます。


「救急車を増やす」だけではない救急医療へ

高千穂産業 民間救急事業部が目指しているのも、単純に民間の救急車を増やすことではありません。

私たちが目指しているのは、

消防の救急車が出場した事案のうち、緊急度・重症度がともに高くないと判断された患者さんについて、一定の条件のもとで民間救急が引き継げる仕組みをつくることです。

消防救急は、命を救う。

介護タクシーは、暮らしを支える。

そして私たち民間救急は、

「医療をつなぐ」存在になる。

そのためには、車両だけを用意すればよいわけではありません。

医療資格者による対応、必要な医療資器材、医療機関との連携、継続的な状態管理、そして地域全体で患者さんを支えるネットワークが必要です。


「搬送する会社」から「地域医療を支えるインフラ」へ

今回のプラスキ郡の取り組みで特に重要なのは、コミュニティ救急救命士だけですべてを解決しようとしていないことです。

医療機関、大学、福祉サービスなど、さまざまな地域パートナーとの連携によって仕組みが成り立っています。

これは日本の民間救急にも共通すると考えています。

民間救急も、

「依頼が来た患者さんをA地点からB地点へ運ぶサービス」

だけで終わる必要はありません。

消防、病院、診療所、訪問診療、介護、福祉、行政などをつなぐ存在になることで、地域医療の中で担える役割はさらに大きくなります。

救急車が必要になってから動くのではなく、

「救急車が必要になる前から支える」

そして消防救急が対応した後も、

「その患者さんを地域へつなぎ直す」

こうした仕組みまで含めて構築していくことが、これからの救急医療には必要なのではないでしょうか。

高千穂産業 民間救急事業部では、消防救急を支え、医療機関と地域をつなぐ新しい民間救急のあり方を目指し、今後も取り組みを進めてまいります。


参考:WDBJ「Pulaski County paramedic visits high-risk patients at home to reduce 911 calls」