お知らせ

シンガポール、非緊急救急車ホットライン「1777」を廃止へ

シンガポール、非緊急救急車ホットライン「1777」を廃止へ

日本の民間救急が学ぶべきは、「番号」ではなく「選びやすい導線」

シンガポール民間防衛庁は、非緊急救急車ホットライン「1777」を2027年1月1日から廃止すると発表しました。

1777は、生命に関わる緊急事案を扱う救急番号「995」の救急資源を守るため、1998年に導入された非緊急搬送用の窓口です。利用者を民間救急事業者につなぎ、緊急性のない搬送ニーズに対応する役割を担ってきました。

しかし現在では、一般診療所、遠隔診療、タクシー・配車サービス、民間救急事業者など、非緊急時に利用できる選択肢が増えています。さらに、1777を通じた予約は、登録されている24事業者全体の予約のうち約6%にとどまっており、中央集約型の電話窓口としての役割は薄れてきたと考えられます。

このニュースは、日本の民間救急にとっても重要な示唆があります。

それは、民間救急の普及には「専用番号を作ること」だけでは不十分だという点です。大切なのは、市民が「119を呼ぶべきか」「医療相談をすべきか」「民間救急を使うべきか」「タクシーや家族送迎で足りるのか」を迷わず判断できる仕組みです。

シンガポールでは1777を廃止する一方で、民間救急事業者の連絡先や料金を確認できる案内ページ、看護師による医療相談窓口、緊急時には995へつなぐ体制を残しています。これは民間救急を不要とする動きではなく、むしろ「緊急救急」と「非緊急搬送」をより明確に分ける流れだといえます。

日本でも、救急車の出動件数は依然として高い水準にあります。消防救急は、心肺停止、脳卒中、重症外傷など、一刻を争う事案に集中すべき社会インフラです。一方で、通院、転院、退院、在宅医療、歩行困難な方の移動、医療的配慮が必要な搬送には、民間救急が果たせる役割があります。

今後の日本に必要なのは、民間救急を単なる「有料の搬送サービス」として見ることではありません。

救急車を呼ぶほどではない。
しかし、タクシーでは不安がある。
家族だけでは移動が難しい。
医療的な観察や介助が必要である。

こうした方々を安全につなぐ仕組みとして、民間救急を地域医療・介護・消防救急の間に位置づけていくことが重要です。

シンガポールの1777廃止は、民間救急の後退ではありません。
むしろ、これからの民間救急に求められるのは、番号そのものではなく、市民が安心して選べる導線、明確な料金、緊急時の判断基準、そして公的救急との役割分担であることを示しているのではないでしょうか。