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救急救命士の力を、地域医療と民間救急の現場へ

救急救命士の力を、地域医療と民間救急の現場へ

―「搬送する人」ではなく、現場を見て、つなぎ、支える専門職として―

日本医事新報社に、滋賀医科大学社会医学講座教授の一杉正仁先生による「救急救命士の助けを求める」という記事が掲載されました。記事では、死因究明の現場における人手不足と、救急救命士がその現場でも活躍できる可能性について述べられています。

記事では、わが国の2025年の死者数が160万5654人であり、そのうち20万4562人が異状死に該当すると紹介されています。また、異状死は「すべての外因死」や「死因が明らかでない死亡」などを指し、高齢化や核家族化を背景に増加しているとされています。

さらに、死体検案や法医解剖を担う常勤医師について、記事では「全国で150~160人程度」とされており、医師だけでなく、放射線技師、臨床検査技師、薬剤師、看護師、心理士など、死因究明を支える人材が十分に確保されていない現状が指摘されています。

この記事の中で、特に重要だと感じたのは、救急救命士について次のように述べられている点です。

「救急救命士は様々な現場で異状死に遭遇しています。」

また、異状死の現場で最初に近い立場で情報を得る救急救命士について、記事では、警察への情報引き継ぎや外表の確認などが死因究明の業務と共通する部分があると述べられています。

この指摘は、私たち有限会社高千穂産業 民間救急事業部にとっても、非常に重要な問題提起です。

救急救命士は「搬送する人」だけではありません

一般的に、救急救命士というと「救急車に乗って患者様を搬送する人」というイメージが強いかもしれません。

しかし実際には、救急救命士の役割は単なる搬送にとどまりません。

現場に到着した救急救命士は、患者様の状態を観察し、意識、呼吸、循環、既往歴、服薬状況、生活環境、ご家族の訴え、現場の状況などを限られた時間の中で整理します。そして、その情報を医師、看護師、医療機関、警察、行政、福祉機関など、必要な関係者へ正確に引き継ぐ役割を担います。

厚生労働省の職業情報提供サイトでも、救急救命士の仕事として、傷病者の容態確認、応急処置、医師への報告、報告書作成などが示されています。また、消防機関に所属していない救急救命士も増えており、病院、ドクターカー、ドクターヘリの診療補助などでも活躍しているとされています。

つまり、救急救命士は「運ぶ専門職」ではなく、現場情報を医学的・社会的に整理し、次の支援へつなぐ専門職でもあります。

民間救急だからこそ活かせる救急救命士の視点

当事業部では、民間救急を単なる移動手段とは考えていません。

私たちが目指しているのは、消防救急を補完し、在宅医療、訪問診療、医療機関、介護・福祉、行政と連携しながら、地域の中で必要な搬送・支援を担う「医療系民間救急」です。

特に在宅医療の現場では、救急救命士の経験が活きる場面が多くあります。

たとえば、患者様の状態が急に悪化したとき、すぐに119番通報が必要な状態なのか、かかりつけ医や訪問診療につなぐべき状態なのか、医療機関への受診・搬送が必要なのか、ご家族だけでは判断が難しい場面があります。

そのような時に、救急現場を経験した救急救命士が関わることで、患者様の状態を観察し、必要な情報を整理し、医師や関係機関へ適切につなぐことができます。

これは、今回の記事で述べられている「救急救命士が現場で得た情報を引き継ぐ」という考え方とも重なります。

死因究明そのものを行うのではなく、現場情報を正確に残す

ここで誤解があってはならない点があります。

民間救急や救急救命士が、死因を判断したり、検案を行ったりするわけではありません。死因の判断や検案は、医師や警察など、法的権限と専門性を持つ関係機関が行うものです。

しかし、現場に関わる者として、患者様の状態、発見時の状況、ご家族からの聞き取り内容、搬送前後の経過、関係機関とのやり取りを正確に記録し、必要な相手に引き継ぐことはできます。

当事業部でも、搬送や対応の際には活動記録を作成し、患者様の状態や対応経過を残すことを重視しています。

これは、単に社内記録を残すためだけではありません。

医療安全、訴訟リスクへの備え、関係機関との情報共有、ご家族への説明責任、そして地域全体で患者様を支えるために、現場記録は非常に重要です。

救急救命士が持つ「観察する力」「記録する力」「引き継ぐ力」は、民間救急の質を高めるうえで欠かせないものだと考えています。

潜在救急救命士の活躍の場としての民間救急

今回の記事では、救急救命士の国家試験合格者が増加していることや、消防職員や民間救急に関する職種などに就いていない「潜在救急救命士」の存在についても触れられています。

救急救命士の資格を持ちながら、消防機関に所属していない方、あるいは消防を退職した後に資格や経験を十分に活かせていない方は少なくありません。

当事業部としては、そうした救急救命士の経験を、地域医療や在宅医療、民間救急の現場で活かすことには大きな意味があると考えています。

消防救急の現場で培った観察力、判断力、連携力、説明力は、民間救急の現場でも必要とされます。

むしろ、今後の高齢社会では、救急車を呼ぶほどではないが、ご家族だけでは対応できない状態、受診や搬送の判断に迷う状態、在宅療養を継続するために専門職の支援が必要な状態が増えていくと考えられます。

その受け皿の一つとして、救急救命士が関わる医療系民間救急の役割は、今後さらに重要になるはずです。

民間救急は、消防救急を補完する地域インフラへ

今回の記事の最後には、非常に印象的な一文があります。

「私たちは救急救命士の助けを求めています。」

この言葉は、死因究明の現場だけでなく、地域医療全体にも当てはまるものではないでしょうか。

救急医療、在宅医療、病院間搬送、施設搬送、地域福祉、行政対応、医療安全、看取りに近い場面。

これらの現場では、医師や看護師だけでなく、現場を見て、状況を整理し、必要な支援へつなぐ人材が必要です。

当事業部は、民間救急を「消防救急の代わり」ではなく、消防救急を補完する地域インフラとして位置づけています。

緊急性の高い事案は119番へ。
一方で、緊急性は高くないものの、医療的配慮や専門的な観察、移動支援、関係機関との連携が必要な事案については、民間救急が担える役割があります。

そして、その中心に救急救命士が関わることで、民間救急の質は大きく向上します。

有限会社高千穂産業 民間救急事業部は、これからも救急救命士の専門性を活かし、患者様、ご家族、医療機関、地域社会にとって安心できる搬送・支援体制の構築に努めてまいります。

参考記事

日本医事新報社
「救急救命士の助けを求める[先生、ご存知ですか(99)]」
著者:一杉正仁 先生
登録日:2026年5月24日/最終更新日:2026年5月25日

[1]: https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product28585 "
救急救命士の助けを求める[先生、ご存知ですか(99)]
– 日本医事新報社"
[2]: https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/401 "救急救命士 - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)"